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  • ピックアッププレイヤー 2016-vol.01 / 大島僚太選手

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SEASON 2016 / 
vol.01

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Oshima,Ryota

自分が自分らしくあるために

MF16/大島僚太 選手

テキスト/麻生広郷 写真:大堀 優(オフィシャル)

text by Aso,Hirosato photo by Ohori,Suguru (Official)

カタールで開催されるAFC U-23選手権に出場するU-23日本代表。
2016年1月13日の朝鮮民主主義人民共和国戦を皮切りに、リオデジャネイロオリンピックの出場権をかけた戦いがスタートする。
川崎フロンターレからは大島僚太が選出された。マイペースで成長を続ける大島の2016年は、
彼自身のサッカー人生にとって大きな転機になるかもしれない。

 2015年12月某日のクラブハウス。川崎フロンターレの公式戦全日程が終了した大島僚太に話を聞いた。

 代表とクラブのかけ持ち、そして怪我での離脱もありハードな1年だったが、Jリーグのシーズンが終わり、大島の表情はすっきりしていたように見えた。2015年の大島はプレー面で安定感が増したように感じる。もともとメンタルを含め好不調の波が少ない印象だが、そのことについて質問してみると、

「どうなんですかね。僕自身のなかで何かが変わったかと聞かれれば、そうではないです」

 という、大島らしい独特の言い回しの答えが返ってきた。

「チームとしてタイトルを獲るという目標でやってきて、サポーターもすごく期待をしてくれていたので、その目標に届かず申し訳ない気持ちです。個人的にもリーグ戦で得点を取ることができませんでしたし。ただ、たくさんの試合に出ることができて、よかった部分、ダメだった部分を客観的に見ながらプレーすることはできたのかなって思っています」

 決して無愛想ではないが、あえて自分の手の内をさらけ出すようなことはしない。チームメイトから「リョウタはおとなしいね」と言われることも多い。だが先輩の中村憲剛は「だけど芯の部分はしっかりしてると思うよ、きっとね。じゃないと、この厳しい世界でやっていけないでしょ」と大島の芯の強さを見抜く。当の本人も、

「負けたくないんです。だから周りの人たちからいろいろなことを盗みたいんですよ。僕が何か話すことで誰かのヒントになるよりも、いまは自分にもっとヒントが欲しい。まぁプロに入ってからというよりは、学生の頃からそういうタイプだったかもしれないですけど。きっと腹黒いんですね。ははは」

と、いつものはにかんだような笑顔でおどけてみせる。

MF14/中村憲剛選手

 ただ、ここ1、2年の大島を見ていると、公の場でも自分の意見をしっかり発言することが多くなった。

 プロの水に慣れたのはもちろんだが、試合に出続けることで周りからの信頼を勝ち取り、チーム内での自分の立ち位置をつかんだことでいい意味での余裕が生まれ、チーム全体のことを考えられるようになったのかもしれない。

「実際のサッカーに置き換えても周りを見なきゃいけないポジションですし、自己満足のプレーにならないように、ということは意識しています。自分なりに考えて思いついたとき発言するときもありますし、話し合うことでお互いに何かつかめるような意見交換は必要だと思いますけど、いろいろ吸収したい欲が強いぶん、どちらかというといろいろ話を聞きたいですし、明かしてもらいたいというスタンスは変わらないです。タツヤ(長谷川竜也・2016年シーズンからチームに正式加入。大島の高校時代の後輩)の加入が決まってから先輩としての意識が出てきたみたいに言われることもありますけど、それは関係ないです。しいていうなら年齢的に、立場的に自然とそうなっているのかなって。まぁ、のんびりとですけど」

 そして本人いわく「深く考えないのか、考えられない脳なのか」挫折した記憶がほとんどないという。壁にぶつかったときに、ただ悩んでいてもしょうがない。サッカーは考えて動くスポーツゆえに、ひとつのことで悩むよりもいろんなことを考えた方がいい。だから勝負に負けて悔しいと感じても、その感情を後に引きずることはない。サッカー選手は「切り替える」という言葉をよく使うが、ネガティブな気持ちを引きずらないのは、プロとしてやっていく上での重要な要素だろう。

「僕がただ鈍感なだけなのかもしれませんが、試合が終わったら切り替わってると思います。ミスが起きたときにその試合のなかでまったく気にせず次、次というのは難しいですし、自分のパフォーマンスがよくなくて試合も勝てないとやっぱりガクっときます。でも翌日のダウントレーニングやオフを挟んでまた練習が始まるってときに、そこで落ち込んでいたら身にならないですから引きずっていられません。今年もうまくいかない試合が何試合かありましたけど、自分なりに何がダメだったのかを考えて、克服しなきゃいけないポイントに気づくことができれば、次はこうやってみたらどうなるんだろうって楽しみがありますし。そういったことにできる限り左右されないようにならなきゃ、自分のポジションを努められないですから」

 フロンターレではチームの中軸として認められた感がある大島だが、U-23日本代表ではチーム戦術に自分のプレースタイルを融合させることに苦労しているように見える。U-23日本代表は全員守備をベースの上、ボールを奪ったらシンプルにゴールに向かうプレーを求められる。フロンターレの大島とU-23での大島を見比べてみると、一番の特徴である細かいつなぎやパスアンドゴーといった、周りを使いながら試合のリズムを作る場面は少ない。それは大島自身も自覚し、U-23日本代表でプレーする上での課題としてとらえている。

「手倉森監督(U-23日本代表監督)や代表のコーチともボールの回し方についての話はしていて、僕の特徴であるつなぎのことも言ってくれています。ただ、カウンターをしかけてサイドに流れるような動きを求められたり、後ろの選手がロングフィードが得意だったりと、全体的な特徴として難しいところはあります。だからといって1人よがりのプレーになっちゃいけない。U-19アジア選手権は何もできなくて負けたイメージがあって、サッカーをしている感じがなかったというか、不本意な大会でした。ああいった過ちを繰り返したくないんです」

 過ちを繰り返したくない。もう悔しい思いはしたくない。

 だからこそ、大島は自分の得意なプレーを封印してでもチームプレーに徹すると心に決めた。自分の考える理想像と周りからの見られ方でジレンマを抱えているかもしれないが、どんなチームのスタイルでも適応し、どんな指導者の要求でも応えるのが一流の選手の証でもある。

 五輪本大会出場をかけた勝負が近くなるにつれて、大島を取り巻く周りの環境も少しずつ変わってきた。テレビや新聞、雑誌などのメディアに取り上げられる機会も増えたが、大島自身は五輪本大会出場の切符を勝ち取ることだけに集中している。

「メディアの方から『代表とフロンターレではプレースタイルが違いますが、そのあたりはどう感じていますか?』という質問をされることもありますが、僕にとってはどっちがいいとか悪いとかではないんです。代表チームの戦い方や選手の特徴をふまえて、このメンバーで勝つために何が必要かと考えたときに、みんなで団結しなきゃいけない。お互いに信頼し合わなければ勝ち上がれないと思っています。だからこそ11人全員が守備の頭にならないと」

 U-23日本代表チーム全体としても、大一番を控えて徐々に仕上がってきた。2015年10月末の鳥栖との練習試合では7-0で大勝。続く11月の湘南との練習試合では先制されながらも終盤に同点に追いつき、1-1のドローという結果に終わっている。

「湘南との練習試合でのピッチ内での会話だったり、試合が終わった後の様子も含めて、チームとしてだんだん本気モードになってきたのを感じています。周りからはいろいろなことを言われますけど、僕らは僕らの目的をもって練習試合に臨んでいるわけで。もちろんどんな試合でも勝ちは大事ですけど、テーマを掲げてその目的を果たさずに勝っても、逆に変な満足というか油断が生まれると思いますし。練習試合、合宿ごとにテーマがあって、湘南戦の試合前のミーティングでは、1ヶ月前の鳥栖戦で出た課題を意識しようという話がありました。本番までの過程や目的という部分では、すごくはっきりしてきたと思います」

 AFC U-23選手権は、2016年1月13日に北朝鮮戦、1月16日にタイ戦、1月19日にサウジアラビア戦と、アジアや中東との代表チームの対戦が続く。対戦国のチームの印象を聞くと、「何をしてくるかわからないなっていう印象です」という答えが返ってきた。

「戦術面はもちろんですが、勢い任せでくるときもあるので、本当に何をしてくるかわからないですね。だからこそ、こちらとしてはより確実性が求められると思います。とくに今回は結果がすべてで、監督やスタッフも勝つことに徹しているわけですから、選手の僕もその方向に進んで行かなきゃ。それで自分のよさが消されたとしても違う部分が成長できればいいですし、その頭でフロンターレに帰ってきて試合に出られなくなったとしても、それはそれで悔しさをバネにしてまた頑張ろうと思えるでしょうし。今は自分に足りない部分をより伸ばせる機会でもあるんじゃないかなって」

 2016年、大島はプロ6年目の年。早生まれの大島は1月23日に23歳になる。

 ピッチの中央で華麗にボールをさばき、献身的に動き回るプレースタイルはフロンターレのサポーターの間ではすっかりお馴染みとなった。年齢的に見れば、J1のチームのレギュラーとしてここまで出場を重ねている選手はそう多くない。大島のポテンシャルからすれば、さらなるステップアップが望めそうな1年になりそうだ。

「僕は高卒でプロに入ったので、成長できる幅はまだあるんじゃないかな、なって欲しいなって自分でも思っています。でも、プロサッカー選手としてそんなに長くやれるとは思っていないんです。年齢に関係なく、単純に気持ちが切れたらそこで終わりですから。出場試合数に関しても、他のチームには自分より多くの試合に出ている人がいるわけで、そこまで多いとは思っていません。試合前にメンバー表を見たときに通算出場数が書いてあって、同世代で僕より試合数が少ない人もいますが、やっぱり上の人を見た方がいいですから」

 AFC U-23選手権で上位3カ国に入れば、リオデジャネイロ五輪の出場権が与えられる。つまり決勝の舞台に上がることができれば、その時点で五輪の切符を手に入れたことになる。決勝戦が行われるのは1月30日。U-23日本代表がどういった状況で日本に帰ってくるかは誰にもわからないが、2016年最初の目標を達成することができれば大島は2月1日に帰国するスケジュールとなっている。

「そうなれば気持ちいいだろうなって思います。その頃にはフロンターレのクラブハウスが完成して引っ越ししているでしょうし、新しい選手も入ってがらっと変わっているでしょうね。もし決勝まで行ければフロンターレへの合流は遅れてしまいますけど、そういったことも含めてこの1ヶ月間を自分の糧にしなきゃいけないと思っています」

 フロンターレとしては2015年11月で公式戦の日程が終了したが、大島は体と心を緩める間もなく代表合宿、中東遠征、沖縄県石垣島キャンプと12月を通してトレーニングを続けてきた。そして年明けにAFC U-23選手権に参加し、その流れのままフロンターレのキャンプに合流することになる。そして仮に五輪本戦の出場を決めたとすれば、夏にはリオデジャネイロに飛ぶスケジュールが控えている。

「長期の休みはないですけど、プラスにとらえると最初からみんなよりも体が動くんじゃないかな、監督にいいアピールができるんじゃないかなって期待もあります。体力や気力という部分はやってみなければわかりませんが、それで1年間持たないようなら、それは自分の力が足りないということです。まぁ、そこはいつもどおり何とかなるだろうというか、やれるとこまでやってやろうと思っています」

 そしてこう続けた。

「そして選手同士の競争というのは毎年のことですから、個人的にはまずレギュラーをつかむことがスタートです。そのために課題をひとつひとつクリアしていきたいです。もちろんゴールやアシストといった数字を取ることも大事ですが、やっぱり一番はチームがどう勝つか、勝つためにどうしていくことが大事かを考えながらやっていかなきゃならないと思います」

 2016年、川崎フロンターレは創立20周年という節目の年を迎える。

 大島が直接クラブに関わったのは20年間のうちの約4分の1だが、先輩たちの背中を見ながらクラブに脈々と流れるアイデンティティを知らず知らずのうちに受け継いできた。

「フロンターレで考えるなら、やっぱりタイトルですよね。僕はクラブの歴史はそこまで知りません。でも、ヒロキさん(伊藤宏樹)やケンゴさんから、フロンターレはどういうクラブであるのかという話はいろいろ聞きました。だから、このクラブを作り上げてくれてきた人たちのおかげで今があるっていう感謝の気持ちがあります。そういう意味でも、この記念の年に優勝したい。優勝しかないなって思っています」

 次は自らの手で道を切り開く番だ。

 ピッチに立てば遠慮はいらないし、自分なりのやり方を通せばいい。気合いを前面に出すことなく、あくまでも冷静沈着。ひょうひょうとした表情のまま、相手を食ったようなプレーを連発する。それが大島僚太の一番の魅力なのだから。

「2016年はいろいろとチャレンジする場があって、僕自身にとっても大きな1年になりそうな気がします。すべてがうまくいくようなチャレンジはないかもしれません。でも、その場面場面では恐れることなく、とにかく全力で挑んでいきたいと思います」

マッチデー

   

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[おおしま・りょうた]

華麗なテクニックと豊富な運動量を兼ね備えたMF。落ち着いたボールさばきで相手のプレッシャーをかわし、ギャップを突いたパスでチャンスを演出する。2014年はU-21日本代表でキャプテンを務めるなど、そのポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。

1993年1月23日、静岡県
静岡市生まれ
ニックネーム:りょうた

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